世の中には、ゴキブリとの遭遇を、まるで道端の石ころを見つけたかのように、全く意に介さず、「ああ、いるな」とだけ認識し、そのまま平然と眠りにつくことができる、鋼の精神を持つ人々が存在します。多くの人にとって、信じがたいその行動の裏には、一体どのような心理が働いているのでしょうか。その心理は、いくつかのタイプに分類することができます。まず、最も多いのが「慣れ・無関心タイプ」です。幼い頃から、家の中にゴキブリがいるのが当たり前の環境で育ったため、彼らの存在が、もはや日常風景の一部と化してしまっているのです。ゴキブリに対する恐怖心や嫌悪感が、そもそも欠如しているか、あるいは極端に麻痺しています。彼らにとって、ゴキブリは、ハエや蚊と大差ない、ただの「虫」の一種であり、特に騒ぎ立てるほどの対象ではない、と認識しています。次に、「合理的・現実主義タイプ」も存在します。彼らは、ゴキ-ブリが不潔で、病原菌を媒介する可能性があるという、衛生面でのリスクは、頭では理解しています。しかし、その上で、「今、この瞬間に、この一匹が、自分の健康に直接的な危害を加える確率は極めて低い」と、冷静にリスクを分析します。そして、深夜に大捕物を繰り広げる労力や、殺虫剤による健康への影響といった、他のデメリットと比較衡量した結果、「放置して寝る」ことが、現時点で最も合理的な選択である、と結論付けるのです。彼らにとって、それは感情的な恐怖ではなく、解決すべき「タスク」の一つに過ぎません。さらに、「極度の疲労・諦めタイプ」も考えられます。仕事や育児などで、心身ともに疲れ果てており、もはやゴキブリ一匹と戦うための、精神的なエネルギーが残っていない状態です。恐怖心や不快感は感じつつも、それ以上に、「もうどうでもいい」「明日にしよう」という、諦めの境地が勝ってしまうのです。しかし、これらのどのタイプであっても、その行動が、ゴキブリの繁殖を助長し、長期的には、より深刻な衛生問題や、健康リスクに繋がる可能性があるという事実に、変わりはありません。平気で寝られるその精神力は、ある意味では羨ましいものですが、決して推奨されるべき、賢明な行動ではない、と言えるでしょう。
ゴキブリがいても平気で寝る人の心理とは