ゴキブリの糞を発見した時、その不快さから、ティッシュでつまんで捨てて終わり、あるいは掃除機で吸い込んで見なかったことにする、といった対処をしてしまいがちです。しかし、前述の通り、ゴキブリの糞には様々な病原菌やアレルゲン、そして仲間を呼び寄せるフェロモンが含まれています。その危険性を完全に除去するためには、正しい手順に基づいた、徹底的な清掃と消毒が不可欠です。安全かつ効果的に掃除を行うための、正しいステップを解説します。まず、掃除を始める前に、必ず「準備」を整えてください。ゴム手袋とマスクを着用することは必須です。これは、糞に含まれる病原菌やアレルゲンを、直接吸い込んだり、肌に触れたりするのを防ぐためです。準備ができたら、いよいよ糞の除去にかかります。ここでやってはいけないのが、乾燥した糞をいきなりほうきで掃いたり、掃除機で吸い込んだりすることです。糞が砕けて、有害な粒子が空気中に舞い上がってしまい、非常に危険です。まずは、アルコール除菌スプレー(エタノール濃度が七十パーセント以上のものが望ましい)を、糞とその周辺にたっぷりと吹きかけ、十分に湿らせます。これにより、粒子の飛散を防ぐと同時に、糞の表面に付着した病原菌を殺菌することができます。糞が湿ったら、キッチンペーパーや使い捨ての布で、外側から内側に向かって、優しく拭き取ります。糞を取り除いたら、そのペーパーはすぐにビニール袋に入れ、口を固く縛って密閉します。これで終わりではありません。次に、糞が落ちていた場所を、もう一度アルコール除菌スプレーで徹底的に拭き上げます。これは、目に見えない糞の痕跡や、仲間を呼び寄せる集合フェロモンを完全に除去するための、非常に重要な工程です。壁や家具の隙間など、拭き取りにくい場所であれば、スプレーを吹き付けておくだけでも効果があります。掃除が完了したら、使用したゴム手袋もビニール袋に入れて処分し、最後に石鹸で丁寧に手を洗いましょう。この一連の正しい手順を踏むことで、ゴキブリが残した危険な痕跡を、安全かつ確実にリセットすることができるのです。