夏の夜、煌々と照らされたコンビニエンスストアの窓ガラスに、無数の羽虫が吸い寄せられている光景を見たことがあるでしょう。これは、多くの夜行性の昆虫が持つ「正の走光性」という、光に向かって進む習性によるものです。この習性を理解し、光をコントロールすることが、不快な羽虫を家に寄せ付けないための非常に効果的な戦略となります。しかし、昆虫はあらゆる光に等しく反応するわけではありません。彼らが特に好むのは、人間には見えない「紫外線」領域の光と、可視光線の中では波長が短い青色や白色の光です。逆に、オレンジ色や黄色といった波長の長い光には反応が鈍いことが知られています。この科学的知見を利用した最も効果的な対策が、「照明器具の交換」です。一昔前の主流であった蛍光灯や白熱電球、水銀灯は、虫が好む紫外線を多く放出するため、いわば「虫集め照明」とも言える存在でした。これを、紫外線をほとんど放出しないLED照明に交換するだけで、飛来する羽虫の数を劇的に減らすことが可能です。さらに一歩踏み込むなら、LEDの中でも光の色を選ぶことが重要です。同じLEDでも、太陽光に近い青白い「昼光色」や「昼白色」よりも、温かみのあるオレンジ色の「電球色」を選ぶことで、防虫効果は格段に高まります。特に、玄関灯や門灯、ベランダの照明など、屋外に設置されている照明をこの「電球色LED」に交換することは、羽虫対策において絶大な効果を発揮します。また、室内からの光漏れ対策も忘れてはなりません。夜間は遮光性の高いカーテンをきっちりと閉めることで、室内の光が外に漏れ、羽虫を誘引するのを防ぎます。窓ガラス自体に、紫外線をカットする効果のある市販の防虫フィルムを貼るのも、日中の明るさを保ちながら防虫効果を得られる優れた方法です。照明の色を変える、光を漏らさない。これらの光に特化した対策は、不快な羽虫を遠ざけるだけでなく、省エネルギーにも繋がり、地球にも家計にも優しい快適な生活環境を創出する、一石二鳥の賢い選択と言えるでしょう。