家庭菜園で大切に育てているトマトやナス、あるいはベランダのプランターで楽しんでいる花々。その葉の裏をふと覗いてみると、まるで白い粉をまぶしたかのように、体長一ミリ程度の小さな虫がびっしりと群がっている。そして、少しでも葉に触れると、その白い粉が一斉にパッと舞い上がる。この、非常に不快で厄介な虫の正体は、「コナジラミ」です。その名の通り、白い粉をまとったシラミのような見た目をしていますが、実際にはアブラムシやカメムシに近い仲間です。日本国内だけでも数十種類が知られており、特に家庭菜園やガーデニングで問題となるのは、オンシツコナジラミやシルバーリーフコナジラミといった種類です。彼らは、成虫も幼虫も、植物の葉の裏に寄生し、口吻を突き刺して師管液を吸います。この吸汁行為が、植物に直接的な被害をもたらします。多数のコナジラミに寄生された植物は、栄養を奪われて生育が悪くなり、葉が黄色く変色したり、萎れたりしてしまいます。最悪の場合、枯れてしまうこともあります。さらに、アオバハゴロモと同様に、コナジラミも排泄物である「甘露」を出します。これが原因で、葉の表面にベタベタとした光沢が現れ、やがて黒いカビである「すす病」が発生し、光合成を妨げます。しかし、コナジラミの最も恐ろしい点は、植物のウイルス病を媒介することです。特に、トマト黄化葉巻病などの深刻な病気を運ぶことが知られており、一度発症すると治療法はなく、その株を処分するしかありません。対策としては、まず、彼らが好む黄色に誘引される習性を利用した「黄色い粘着シート」を、植物の近くに設置するのが有効です。物理的に成虫を捕獲し、密度を下げることができます。また、発生初期であれば、牛乳やデンプンを水で薄めたものをスプレーし、乾燥させて窒息させるという、農薬を使わない方法もあります。大発生してしまった場合は、適用のある殺虫剤を散布する必要がありますが、コナジラミは薬剤抵抗性を持ちやすいため、異なる系統の薬剤をローテーションで使用するのが効果的です。日頃から葉の裏をこまめにチェックし、早期発見・早期対処を心がけることが、被害を最小限に抑えるための鍵となります。
ベランダを舞う小さい白い虫はコナジラミ