夏の庭、アジサイやバラ、柑橘系の木などの葉や茎に、まるで雪が積もったかのように、ふわふわとした白い綿のようなものが付着しているのを見つけたことはありませんか。指で触れると、その綿がぴょんと跳ねて驚かされることもあります。この、一見するとカビか何かのようにも見える、不思議な物体の正体は「アオバハゴロモ」というセミに近い昆虫の幼虫です。その見た目から「ワタフキムシ」とも呼ばれ、夏の庭ではおなじみの光景の一つです。アオバハゴロモの幼虫は、体長五ミリ程度の小さな体ですが、その体から白いロウ状の物質を分泌し、まるで綿のドレスをまとっているかのように全身を覆っています。この白い綿は、アリや鳥といった天敵から身を守るための巧妙なカモフラージュであり、また、強い日差しや乾燥から体を保護する役割も果たしていると考えられています。彼らは、植物の茎や葉に口吻を突き刺し、師管液、つまり植物の栄養分を吸って成長します。そのため、園芸的には害虫に分類されます。数が少ないうちは植物への影響も軽微ですが、大発生すると、植物の生育が阻害されたり、見た目が損なわれたりすることがあります。さらに、彼らが引き起こす二次的な被害として「すす病」があります。アオバハゴロモは、吸った汁の中から余分な糖分を「甘露」として排泄します。この甘露が葉や枝に付着し、それを栄養源として黒いカビ(すす病菌)が繁殖するのです。葉が黒いすすで覆われると、光合成が妨げられ、植物の健康がさらに損なわれます。駆除方法としては、数が少ない場合は、水圧の強いホースの水で洗い流すのが最も手軽で、植物への負担も少ないです。粘着テープで貼り付けて取るという物理的な方法もあります。大発生してしまった場合は、市販の殺虫剤(浸透移行性のものが効果的)を使用する必要がありますが、薬剤を使用する際は、必ず説明書をよく読み、用法用量を守ってください。そのユニークな姿は夏の風物詩とも言えますが、大切な植物を守るためには、その正体を正しく理解し、増えすぎる前に対処することが肝心です。