ネズミ駆除を成功させるための第一歩、それは、敵であるネズミが「どこにいて」「どのルートを通って」「何をしているのか」を正確に把握することです。プロの駆除業者は、この調査を最も重要視します。そして、そのための最大のてがかりとなるのが、ネズミが活動した痕跡、通称「ラットサイン」です。このラットサインを正しく見つけ出し、読み解くことができれば、効果的な対策を立てることが可能になります。代表的なラットサインは、主に三つあります。第一に、「フン(糞)」です。ネズミのフンは、彼らの種類や行動範囲を特定するための、最も重要な情報源です。家の中でよく見られるクマネズミのフンは、六ミリから十ミリ程度で、細長く、移動しながら排泄するため、部屋の隅や通路に散らばっていることが多いです。一方、水回りを好むドブネズミのフンは、一センチから二センチと大きく、太くて丸みを帯びており、特定の場所にまとめてされる傾向があります。フンが多く落ちている場所は、ネズミが頻繁に行き来するメインストリートである可能性が高いです。第二のサインが、「かじり跡(咬害)」です。ネズミは、硬いものをかじって歯を削る習性があります。家の柱や壁、家具、石鹸、そして食品の袋などに、二本の歯でかじったような、特徴的な跡が残されていないかを確認しましょう。特に、壁や天井に新しいかじり跡がある場合、そこが巣への出入り口となっている可能性があります。電気の配線やガス管にかじり跡を見つけた場合は、火災やガス漏れの危険があるため、特に注意が必要です。第三のサインが、「こすり跡(ラビングマーク)」です。ネズミは、壁際や柱の隅など、体に何かをこすりつけながら移動する習性があります。そのため、彼らが頻繁に通るルートには、体の汚れや脂が付着し、黒光りしたような筋状の汚れが残ります。このラビングマークをたどることで、ネズミの主要な移動経路を特定することができます。これらのラットサインを、家の隅々、特に天井裏や床下、キッチン、物置などを注意深く観察して見つけ出すこと。それが、罠や毒餌をどこに仕掛けるべきかを教えてくれる、最も確実な地図となるのです。