蜂に刺された時の痛みを語る上で、しばしば比較対象となるのが、アシナガバチとスズメバチです。どちらも激しい痛みを伴いますが、その痛みの「質」や「強さ」には、どのような違いがあるのでしょうか。科学的なデータと、実際に刺された人々の証言から、その違いに迫ります。まず、痛みの強さを客観的に示す指標として、毒液に含まれる「痛みを引き起こす物質(発痛物質)」の量が参考になります。アシナガバチの毒には、神経を直接刺激する「セロトニン」という物質が、スズメバチに比べて、はるかに多く含まれています。このセロトニンが、刺された瞬間の、焼けるような、鋭い痛みの主な原因とされています。そのため、「刺された瞬間の痛みは、アシナガバチの方が強い」と感じる人が多いようです。一方、スズメバチの毒には、アシナガバチにはない、特殊な神経毒「マンダラトキシン(オオスズメバチの場合)」などが含まれており、より複雑で、広範囲に及ぶ痛みと、組織の破壊を引き起こします。刺された後の、ズキズキと脈打つような、持続的な痛みや、腫れのひどさは、スズメバチの方が勝ると言われています。つまり、痛みの質を例えるならば、アシナガバチは「瞬間的に、鋭利な刃物で焼かれたような痛み」、スズメバチは「鈍器で殴られた後、その場所が内側から蝕まれていくような、重く、広がる痛み」と表現できるかもしれません。また、毒の注入量そのものも、体の大きいスズメバチの方が、アシナガバチよりも圧倒的に多く、その分、アナフィラキシーショックを引き起こすリスクや、致死性も高くなります。結論として、「どちらが痛いか」という問いに対する明確な答えはありません。痛みの感じ方には個人差があり、刺された場所や、注入された毒の量によっても大きく変わるからです。しかし、一つだけ確かなことは、どちらの蜂に刺されても、それは耐え難いほどの激痛であり、そして、どちらも命を脅かす危険性を秘めている、ということです。