家の壁や本棚、食品庫などで、ゴキブリの糞のような、黒くて小さな点々とした汚れを発見した。しかし、ゴキブリそのものの姿は一向に見かけない。そんな時、その黒い汚れの正体は、ゴキブリの糞ではなく、全く別の生物、あるいは現象である可能性も考えられます。その中でも、特にゴキブリの糞と間違えられやすいのが、「チャタテムシの糞」と、彼らが好む「カビ」の存在です。チャタテムシは、体長が一ミリから二ミリ程度の非常に小さな昆虫で、高温多湿な環境を好み、カビやホコリ、食品の粉などを主食としています。彼らもまた、非常に小さな黒い糞をしますが、ゴキブリの糞との違いは、その「場所」と「量」にあります。チャタテムシは、湿気がこもりやすくカビが発生しやすい、古い本や段ボール、畳、壁紙の裏といった場所に大発生する傾向があります。もし、そのような場所で、非常に広範囲にわたって、まるで砂を撒いたかのように無数の黒い点々が見られる場合は、チャタテムシの糞である可能性が高いです。一方、ゴキブリの糞は、より局所的に、彼らの巣や通り道となる場所に集中する傾向があります。また、チャタテムシの糞と混同されやすいのが、彼らの餌である「黒カビ」そのものです。湿度が高い壁紙や、結露しやすい窓のサッシ周り、風呂場のタイル目地などに発生する黒カビの斑点が、チャタテムシの糞や、チャバネゴキブリの糞のシミと、見た目には非常によく似ています。これらを見分けるポイントは、その「質感」と「広がり方」です。カビは、表面が少しけば立っていたり、じわじわと滲むように広がっていったりする特徴があります。一方、糞は、あくまでも個体であり、ルーペなどで拡大して見ると、はっきりとした粒状や、擦り付けられたような形をしているのが分かります。ゴキブリの糞、チャタテムシの糞、そして黒カビ。この三者は、いずれも「高温多湿で、掃除が行き届いていない」という、不衛生な環境を示す危険なサインであることに変わりはありません。その正体が何であれ、発見したら、原因となっている湿気対策と、徹底的な清掃・除菌を行うことが、快適で健康的な住環境を取り戻すための、重要な一歩となるのです。
ゴキブリの糞とチャタテムシの関係