ネズミ駆除の方法を調べていると、必ずと言っていいほど目にするのが「超音波発生装置」です。コンセントに差し込むだけで、人間には聞こえない特殊な超音波を発生させ、ネズミを不快にさせて追い出すという、その手軽さと安全性から、多くの人が興味を惹かれる製品でしょう。薬剤を使わずに、ただ設置するだけでネズミがいなくなるのであれば、これほど理想的な対策はありません。しかし、その効果については、専門家の間でも意見が分かれており、過度な期待は禁物である、というのが実情です。超音波発生装置の基本的な原理は、ネズミが嫌がる周波数の音波(一般的に二十キロヘルツ以上)を発生させ、彼らにとって居心地の悪い環境を作り出し、その場所から自然に退去させるというものです。製品によっては、ネズミが音に慣れてしまうのを防ぐために、周波数をランダムに変動させる機能などが付いているものもあります。実際に、設置した直後には、天井裏の物音が減った、ネズミの姿を見かけなくなった、といった一定の効果が見られたという声も確かに存在します。特に、警戒心の強いネズミに対して、初期の段階で「ここは何か嫌な感じがする場所だ」と認識させる、追い払い効果は、ある程度期待できるかもしれません。しかし、その効果が持続するかどうかについては、多くの疑問符が付きます。最大の問題点は、ネズミがその音に「慣れてしまう」ことです。最初は不快に感じていた超音波も、自分に直接的な危害がないと学習すると、次第にその環境に適応し、平気で活動を再開してしまうケースが非常に多いのです。また、超音波は、壁や家具といった障害物を通り抜けることができないため、効果が及ぶ範囲は、装置が設置された一部屋などの、非常に限定的な空間に限られます。天井裏や壁の中に作られた巣の中にいるネズミにまで、効果を及ぼすことは困難です。結論として、ネズミ駆除における超音波の効果は、「限定的であり、補助的な対策の一つ」と位置づけるのが適切でしょう。すでに深刻な被害が出ている状況を、超音波だけで完全に解決することは、ほぼ不可能です。粘着シートや毒餌といった、より直接的な駆除方法と組み合わせたり、あるいは、一度駆除した後の再発防止策として使用したりするのが、賢明な使い方と言えるかもしれません。