家の中で蜘蛛を発見した時、多くの人が抱くのは「不快だ」「気持ち悪い」といったネガティブな感情です。その感情から、蜘蛛は問答無用で「害虫」であると決めつけてしまいがちです。しかし、一度冷静になって、彼らが家の中でどのような役割を果たしているのかを考えてみると、その評価は大きく変わってくるかもしれません。結論から言うと、日本国内の家屋で一般的に見られる蜘蛛のほとんどは、人間にとって「益虫」としての側面が非常に強い生き物です。彼らが害虫ではないと言える最大の理由は、人間やペットに対して、直接的な危害をほとんど加えない点にあります。家の中で見かけるアシダカグモやハエトリグモ、イエユウレイグモといった蜘蛛たちは、基本的におとなしい性格で、人間を自ら攻撃してくることはありません。また、ハエやゴキブリのように、病原菌を媒介して衛生的な問題を引き起こすこともありません。一方で、彼らが益虫であると言える最大の理由は、その食性にあります。彼らは生粋のハンターであり、その主食は、私たちが本当に駆除したいと願っている、本物の「害虫」たちなのです。例えば、巨大なアシダカグモは、ゴキブリの天敵として知られ、一晩で数匹のゴキブリを捕食すると言われています。壁や天井をピョンピョンと跳ね回る愛嬌のあるハエトリグモは、その名の通り、ハエや蚊、そしてコバエなどを捕らえてくれます。風呂場などでよく見かける、細長い脚を持つイエユウレイグモは、ダニやチャタテムシといった、非常に小さな害虫を食べてくれます。つまり、彼らは、私たちが気づかない家の隅々で、二十四時間体制で活動してくれる、無料の害虫駆除業者なのです。もちろん、蜘蛛が張る「巣」が、見た目に不潔で、掃除の手間を増やすという点においては、「害」と言えるかもしれません。また、ごく稀に、セアカゴケグモなどの毒を持つ蜘蛛が家に侵入する可能性もゼロではありません。しかし、総合的に見れば、ほとんどの家の蜘蛛は、彼らがもたらすデメリットを、はるかに上回るメリットを、私たちの生活にもたらしてくれているのです。
家の蜘蛛は益虫?それとも害虫?